不毛な澱のカタルシス

その心に独善と偽善が満ちている限り
自省と自戒に至ることはない
説得は届かず納得することはない
  
公平かつ公正であれと要求するが
その矛盾に気付くことは永劫ない
区別と差別との違いを解せず
応対と対応との違いを解せず
会話と対話との違いを解せず
機微も機知も無い
木を見て森を見ず
然るに了解はしても理解はできまい
     
我田引水
周囲を顧慮せずに自分の都合や損得のみで物事を考え
傷つかぬためなら他人を貶めるのも躊躇わない
   
成果も結果も効果も伴わない
配慮も遠慮もなく在るのは憂慮のみ
  
道徳律なき主張は唾棄される
収益がなければ報酬の原資がない故
任務を遂行せぬものに価値はない故
   
歪んだ自意識と誤った権利意識の中で
最も重要で肝要なものを失い
自分を取り巻く全てのものを逆恨みし
終生心安らぐことができぬまま
人生を観照することもなく
虚しく潰えるであろう
 
これぞ正しく自縄自縛 身から出た錆
内在する醜悪さこそがそのプシュケーを汚す

ただひとつ

いまわの際に思い浮かべる恋は
唯一なのがよい
 
誰にも話せず叶わないのがよい
はかなく散った幻のがよい
足掻き苦しんだ夜が多いほどよい
美しくなくてもよい
忘れられないほどなら
それがよい
 
最期まで秘密にしておくのがよい
思いは届かないのがよい
死後にそっと知られるくらいがよい
 
満たされなかった分だけ
悲しみの深さだけ
思いが募っていたのなら
それがよい
 
簡単には口にできなかった
その思いの大きさが
その瞬間に自分を満たし
華を添えてくれるなら
それがよい
 
意味はあっただの
無意味だっただのと
考えさせないのがよい
 
泰然自若として騒がず
穏やかな終わりであれば
それがよい
 
唯一の恋なら
それでよい

ことの終わり

「最大のライバルは、いつもきみの隣で眠るのが
 習慣になってる、この子だよ」
 
「なにばかなこと言ってるのよ。
 違うんだってば。ペットじゃ結局埋められないの。
 やっぱり、そういうのは人とは違うものなの」
 
その意味も分かる。
それはきっとそうなんだろうけれど。
でも、思うに積み重ねてきた年月の重みは強いはず。

たとえば。
ときに他人には見せなかった涙があっただろう。
ときに激しく怒り、あるときは、泣きじゃくることも。
愚痴に次ぐ愚痴を黙って受け止めてくれたのは、
いつだって、その愛猫だったんだよね?
 
あらためて思う。それには、敵わないよ。
 
しかも。
いつまでも、子供のようにちっちゃいのに、
昔と違って、目やにが増えて、
しょっちゅう吐いて、身軽さがなくなり、
急速に老いていくその姿に、
ぼくは想像せずにはいられない。
ペットロスになって、毎日毎日塞ぎ込む日々のきみを。
 
それともうひとつ。
 
埋められないものを満たしたいと言いながらも、
一方では、そんな繋がりを否定し続け、
相変わらず心の片隅で、どうしても他人を信じ切れず、
心を完全には誰にも預けられない、きみの心の聖域。

 
「ほらね。やっぱりそう。でも、覚悟はもうできてた。
 いつかはそうなると思っていたから」
 
完全に信頼して、裏切られたとき。
そのときには、耐えられないほどの
心の闇をきみは抱えていることを
知りながら、僕は・・・。
いや、そこに気付いたからこそ、なのだけれど。
 
嗚呼。だから、そんな強がりを言わせるまねは
決してしたくはなかった。
それは、本当なんだ。

それでも、そうしてしまったのは。
ただ、ぼくが負けたからなんだ。
 
絶対的にきみを必要とし、決して裏切らない存在である、
気まぐれで、わがままで、ときおりひどく甘えん坊になる、
あの子の揺らがない縄張り意識の強さに。
 
これからも忘れない。あの強い口調を。
 
「わたしは、可愛がるためにこの子を飼ってるの」

月齢と朔望(月相)による月の和名一覧(満ち欠けによる月の名前)

「世間(よのなか)は空しきものとあらむとぞこの照る月は満ち欠けしける」(万葉集 巻第三・四四二)
「つぎの夜から 欠ける満月より 14番目の月が いちばん好き」(荒井由実『14番目の月』)
古より日本では月を愛でてきた*1。万葉の時代からユーミンに至る現代も、その幻想的で美しく夜空に浮かび上がる月が移ろう姿に思いを投影してきた。また、月が潮汐や人体のバイオリズム、生物の産卵、植物の生長などにも連動し影響を与えることを早くから知っており、旧暦を利用していた1872年までは、朔望(月の満ち欠け)により日付を把握した。今でも「月発ち(つきたち)」が「一日(ついたち)」となり、「月隠り(つきごもり」が「晦日(みそか=つごもり)」となり、と言葉は受け継がれているが、多くの月の和名は忘れられてしまった。そこで、改めて月齢順に並べてみると、月相によっては、月には非常に多くの別名があることが分かる。これは、例えば、宇多法皇は満月にまだ満たない十三夜月を「無双」と賞し、ほんの少し欠けているところが美しいとするなど、月に対する歎美と礼賛の思いが、日本人の心に深く根付いているからであろう。

月の和名一覧

  1. 旧暦1日=朔(さく)/朔日(さくじつ/ついたち)/月発ち(つきたち)/新月(しんげつ)/new moon
  2. 旧暦2日=二日月=既朔(きさく)/繊月(せんげつ)
  3. 旧暦3日=三日月(みかづき)=朏(みかづき/ひ)/初月(ういづき/はつづき/しょげつ)/若月(わかづき)/眉月(まゆづき)/月の眉(つきのまゆ)/蛾眉(がび)/朏魄(ひはく)/始生魄(しせいはく)/哉生明(さいせいめい)/磨鑛(まこう)/虚月(こげつ)/初弦(しょげん)/偃月(えんげつ)/ 彎月(わんげつ)/欠月(けつげつ)/初魄(しょはく)/鈎月(こうげつ)/月の剣(つきのつるぎ)/三夜(さんや)/waxing crescent/sickle moon
  4. 旧暦4日
  5. 旧暦5日
  6. 旧暦6日
  7. 旧暦7日=半月(はんげつ)/弓張月(ゆみはりづき)/上の弓張(かみのゆみはり)/弦月(げんげつ/ゆみはり)/恒月(こうげつ)/破月(はげつ)/破鏡(はきょう)/片割月(かたわれづき)/上弦の月(じょうげんのつき)/初弦(しょげん)/玉鈎(ぎょっこう)/偃月(えんげつ)/彎月(わんげつ)/half-moon/first quarter
  8. 旧暦8日
  9. 旧暦9日
  10. 旧暦10日=十日夜(とおかんや)
  11. 旧暦11日=十日余の月(とおかあまりのつき)/waxing gibbous
  12. 旧暦12日
  13. 旧暦13日=十三夜月(じゅうさんやづき)/new gibbous moon
  14. 旧暦14日=小望月(こもちづき)/幾望(きぼう)/待宵の月(まつよいのつき)
  15. 旧暦15日=十五夜(じゅうごや)=望(ぼう)/満月(まんげつ)/望月(もちづき)/名月(めいげつ)/天満月(てんまんげつ/あまみつき)/最中の月(もなかのつき)/円月(えんげつ)/full moon
  16. 旧暦16日=十六夜(いざよい)=不知夜月(いざよいつき)/既望(きぼう)/哉生魄(さいせいはく)
  17. 旧暦17日=立待月(たちまちづき)/既生魄(きせいはく)/old gibbous moon
  18. 旧暦18日=居待月(いまちづき)/座待月(いまちづき)
  19. 旧暦19日=寝待月(ねまちづき)/臥待月(ふしまちづき)/waning gibbous
  20. 旧暦20日=更待月(ふけまちづき)/亥中の月(いなかのつき)/二十日月(はつかづき)
  21. 旧暦21日=二十日余りの月(はつかあまりのつき)
  22. 旧暦22日
  23. 旧暦23日=半月(はんげつ)/下の弓張(しものゆみはり)/弦月(げんげつ/ゆみはり)/恒月(こうげつ)/破月(はげつ)/破鏡(はきょう)/片割月(かたわれづき)/下弦の月(かげんのつき)/偃月(えんげつ)/彎月(わんげつ)/真夜中の月(まよなかのつき)/last quarter
  24. 旧暦24日
  25. 旧暦25日
  26. 旧暦26日=暁月(ぎょうげつ)/暁月夜(あかつきづくよ)/有明(ありあけ)/waning crescent
  27. 旧暦27日
  28. 旧暦28日
  29. 旧暦29日
  30. 旧暦30日=三十日月(みそかづき)=晦日月(みそかづき)/晦(つごもり/みそか)/月隠り(つきこもり)/dark moon

その他の月の呼び名

  • 盈月(えいげつ)=上り月(のぼりづき)=白月(びゃくげつ)=次第に満ちていく月の総称で、月齢0日〜13日を指す。
  • 虧月(きげつ)=老い月(おいづき)=黒月(こくげつ)=次第に欠けていく月の総称で、月齢14日〜29日を指す。
  • 降り月(くだりづき)=満月を過ぎて次第に欠けていく月で、月齢17日〜21日を指す。
  • 有明の月=残月(ざんげつ)=残んの月(のこんのつき)=朝行く月=暁月(ぎょうげつ)=明け方になってもまだ残っている月の総称で、月齢17日〜26日を指す。
  • 初三の月(しょさんのつき)=月齢0日〜2日を指す。
  • 夕月(ゆうづき)=黄昏月(たそがれづき)=日没前後に見える月の総称で、月齢2日〜5日を指す。
  • 宵月(よいづき)=宵の間だけ見える月。
  • 斜月(しゃげつ)=斜めに照らし、西に没しようとする月。
  • 月輪(がちりん、がつりん、げつりん)=輪のように丸い月。
  • 佳月(かげつ)=綺麗な月。名月。
  • 中秋の名月(ちゅうしゅうのめいげつ)=三五の月(さんごのつき)=芋名月(いもめいげつ)=月夕(げっせき)=半ばの月(なかばのつき)=Harvest Moon=旧暦8月15日の月。一年間で最も美しい月とされた。その日が曇りなら無月(むげつ)、雨なら雨月(うげつ)と呼ばれた。
  • 後の月(のちのつき)=月の名残(つきのなごり)=栗名月(くりめいげつ)=豆名月(まめめいげつ)=小麦の名月=女の名月=旧暦9月13日の月。
  • 二夜の月(ふたよのつき)=旧暦8月15日と9月13日の両方の月のこと。片月見/片観月(二夜の月のうち片方だけを見る)は、不吉とされた。
  • 二日月(ふつかづき)=特に旧暦8月2日の月。
  • 立待(たちまち)=特に旧暦8月17日の月。
  • 居待(いまち)=特に旧暦8月18日の月。
  • 臥待(ふしまち)=寝待(ねまち)=特に旧暦8月19日の月。
  • 更待(ふけまち)=二十日月(はつかづき)=特に旧暦8月20日の月。
  • 淡月(たんげつ)=光の淡い月。
  • 煙月、烟月(えんげつ)=霞んで見える月。
  • 薄月(うすづき)=薄雲のかかった月。
  • 朧月(おぼろづき)=幽かに霞んだ月で、春の季語となる。
  • 春月(しゅんげつ)=春の薄ぼんやりとした月。
  • 秋月(しゅうげつ)=秋の澄み渡った月。
  • 寒月(かんげつ)=冷たく冴えてみえる月で、冬の季語となる。
  • 皓月(こうげつ)=素月(そげつ)=明月(めいげつ)=朗月(ろうげつ)=清く澄んだ月。
  • 海月(かいげつ)=海上の空に見える月。または海面に浮かんでいる月影。
  • 青月(せいげつ)=青く輝く月。
  • 孤月(こげつ)=寂しげにみえる月。
  • 月食(月蝕)=太陽から地球を結ぶ直線の延長上に月が並ぶことで太陽光が遮られる地球の影に入ることで暗くなり、地球から見ると、まるで月が欠けてしまったかのように見える現象で、必ず満月の時に起こる。月全体が地球の本影(地球によって太陽光が完全に遮断された部分)に完全に入ることを皆既月食、月の一部分だけが本影の中に入ることを部分月食、月全体が地球の半影(地球によって太陽光の一部が遮断された部分)に完全に入ることを半影月食という。
  • 月出帯食=月が食によって欠けた状態で昇って来ること。
  • 月没帯食=食によって欠けたまま月が沈むこと。
  • 月代(つきしろ)=玉兎(ぎょくと)=玉蟾(ぎょくせん)=蟾魄(せんぱく)=月魄(げっぱく)=桂男(かつらお)=月人男(つきひとおとこ)=細好男(ささらえおとこ)=姮娥(こうが)=仙娥(せんが)=嫦娥(じょうが)=月の別名。
  • ファーストムーン、ブルームーン=ひと月に満月が2度ある場合のそれぞれの呼び名。ブルームーンは、もともと一つの季節の間に4回満月があるときの3回目の満月を指していた。
  • スーパームーン=一年の内で月が地球に最も近づいた時に満月もしくは新月になった月。最接近と満月とが1時間以内に起きる場合、特に「エクストリーム・スーパームーン」と呼ばれる。他の満月と比べて約30%も明るく、約14%大きく見える。地球を回る月の軌道は楕円形をしている為、地球からの距離が常に変わる。スーパームーンは満月14回ごとに起こる。2015年9月28日の次は2016年11月14日、その次は2018年1月2日。

関連用語

  • 月相=月の位相=太陽と月の相対的な位置関係の変化に伴い、地球から見た月と太陽の視黄経の角度が変化し朔望を齎す天文現象のこと。
  • 晦朔=三十日と一日。つまり、1か月間のこと。
  • 朔望月=月が朔から次の朔(または望から次の望)になるまでの一巡りの周期のこと。朔間隔はその月によって異なり、平均朔望月は約29.530589日である。旧暦は朔望月を1か月の単位とした。

 

参考リンク

国立天文台暦計算室 こよみ用語解説 月のあれこれ 月の位相、月齢の解説
Hunter's Moon 英語の月の名前
月を識る 月の知識

月の名前

月の名前

月の下で

月の下で

お勧め。竹取物語にはじまり、源氏物語土佐日記、そして雨月物語…、月から物語は生まれ、月は物語を彩る。万葉集には数多くの月の歌が収められ、西行が、芭蕉が、一茶が、山頭火が…、尽きることなく月は歌に句に詠まれつづける。山川登美子が、与謝野晶子が月下で恋に落ち、泉鏡花は妖しい月に魅せられる。月の写真と文学が織り成す美しい一冊。
ムーン・ダイアリー'16

ムーン・ダイアリー'16

月の満ち欠けと月が運行する星座を記載した見開き1週間タイプのスケジュール帳
MOON BOOK 2016

MOON BOOK 2016

ルナ~月ごよみ~ 2016年 カレンダー 壁掛け

ルナ~月ごよみ~ 2016年 カレンダー 壁掛け

※お月さまの和名ではなく、年月日の月の和風月名を知りたくて「月の名前」でウェブ検索し、誤ってこちらにアクセスした人には、以下のサイトがおすすめ
【みんなの知識 ちょっと便利帳】月の名称・異称・異名 [一月・睦月] - 睦月・如月・弥生・卯月・皐月・水無月・文月・葉月・長月・神無月・霜月・師走
月の名前 旧暦・昔の呼び方は?由来は? | jun smile j

*1:有名な例でいえば、夏目漱石が英語教師時代に、"I love you"を「我君を愛す」と訳した生徒に対し、「日本人はそんなことを言わない。月が綺麗ですね、とでもしておきなさい」と教えた逸話からも、日本人と月の密接な関係を窺い知れる。

たて読み

あふれる思いを抑えて
なにごとも無いかのごとく
ただの友達のようにふるまって
がんばってきたけれども
すぎさっていく時の中で
きれいな思い出のままでとどめるだけじゃなく
であえてよかったと心から思えるほど
すなおにこの思いをすべて伝えたい

心を重ねて

全てを悟る瞬間がある。
処世の要諦は、
主我的な考え方を棄て去ることとは違う、と。
 
とある番組で、10代の心に響いた歌として、
次の歌詞のフレーズが紹介されていた。

「ずっと前からキミが好きでした」
Oh 精一杯の想いを全部
今すぐ伝えたいの
でも傷つきたくない
嫌われたくない
でも誰かに取られたくもない

満場一致で共感できるという若者の賞賛の声に対し、
「ただ、気をつけないと、『自分が』『自分が』と
 常に自分中心に考える自分病にかかってしまう」と
分析されているのを聞いて、
それはごもっともと賛同しつつも、
正論を唱え訓戒を垂れる手法では、
若者への助言としては、
正鵠を射た指摘にはなっていないと感じた。
 
他人の考えや気持ちに影響を与えることはできても、
自在に操ることはできない。
ましてや、完全に一致させることはできない。
真っ向から否定すると必ず反作用が生じる。
かといって、相反する考えを歩み寄る努力だけでは、
関係を結びつけられない。
 
人と人を紛紜させる元凶は、大抵の場合、
両者の我欲が求める利害の不一致にすぎない。
 
誰もが、愛だの友情だの親切心などの美名のもとに
打算的な干渉を正当化する。
驕慢な底意を包み隠し、相手の思惑を忖度しつつ、
優しさに名を借りた独善的な強圧を繰り広げる。
それでも、利害が一致している場合は、
関係はうまくいく。
  
愛されたいという欲望と、
都合のいい関係が欲しいという欲望。 
相手にして欲しいという欲望と、
お金が欲しいという欲望。 
結婚を迫らないから、若い男とばかり浮気する人妻。
後腐れが無いから、既婚者同志のダブル不倫。
  
ところが、一致しない場合、これ程苦痛なものはない。 
求めているものが違っている限り、うまくはいかない。
 
いかなる好条件も
それらを求めていない人には響かない。

誰かを深く愛したい。
いつもそれを渇望している者は、
愛してもらえなくても、そんなことは一向に構わないのだろう。

反面、愛を受け取ってもらえないことは、
他の全てを得たとしたところで、虚無感に絡め取られるまでだが、
それは、愛することの愚かさを証明するわけではない。

心は、かくも複雑なのだから。