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気付けば男性作家の小説ばかり

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トルーマン・カポーティティファニーで朝食を

ティファニーで朝食を

ティファニーで朝食を

当時20歳だったトルーマン・カポーティが執筆に適した場所を求め各地を転々とし、2年の歳月をかけて書き上げた処女作「遠い声、遠い部屋」は1948年に発表されるや否や、ジョン・スタインベック怒りの葡萄」やアーネスト・ヘミングウェイ誰がために鐘は鳴る」に代表されるアメリカの自然主義中心の文壇に大きな風穴を開けた。


ポーの影響を多分に感じる幻想的で美しいこの傑作及び「冷血」(1966)*1は、(勿論評価は二分に分かれるが)近代アメリカ文学の古典として必読書であることは間違いないと目されている。


一方、オードリー・ヘップバーンが主演したお洒落映画として有名な「ティファニーで朝食を」に関しては誤訳がひどくて日本では評価が低過ぎる。*2それだけに、村上春樹の新訳は「グレート・ギャツビー」や「ロング・グッドバイ」「キャッチャー・イン・ザ・ライ」以上の存在意義を感じる。カポーティの心温まる児童書「クリスマスの思い出」でも山本容子の挿絵と相俟って泣ける作品に仕上げた実績もあることだし、これまでの不当な評価が改善されることを期待している。

クリスマスの思い出

クリスマスの思い出




ジム・フシーリ「新潮クレスト・ブックス ペット・サウンズ」

ペット・サウンズ (新潮クレスト・ブックス)

ペット・サウンズ (新潮クレスト・ブックス)

村上ソングズでもビーチボーイズ「God Only Knows」を採り上げていたが、「ペット・サウンズ」のアルバム製作話を訳すとは思わなかった。あのような不世出の傑作の裏舞台をどのように訳出してくれるかが楽しみ。
村上ソングズ

村上ソングズ


読む小説を無作為に抽出して読んでいるつもりが、気付けば読後感が優れていたのは、大抵の場合、男性作家であった。


ここ最近で目にした女性作家は倉橋由美子パルタイ」と尾崎翠第七官界彷徨」と映画「シュガー&スパイス」の影響で手にした山田詠美「風味絶佳」くらい。「風味絶佳」についていえば、恋が抱える理不尽さを描いた設定は、充分過ぎるほどにリアルで、自分の失恋経験に重ねて泣ける話ではあるのだが、同じ失恋を描いた話なら森見登美彦太陽の塔」のほうがずっと共感できた。

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

最近、恋愛をテーマにした男性作家の小説に於ける時代の潮流を検証した「野性時代」2007年10月号(特集「男子恋愛小説今昔」)を再読し、採り上げられている乙一「暗いところで待ち合わせ」や滝本竜彦NHKにようこそ!」、森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」、大槻ケンジ「グミ・チョコレート・パイン」のグミ編というラインアップをみて、また、「決して幻想に囚われず、恋の喜怒哀楽を客観的に楽しむ、メタな突っ込み視点に依る新しい恋愛像が小説として描かれている」という評論に大いに頷き、その思いを深めた。
夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

NHKにようこそ! (角川文庫)

NHKにようこそ! (角川文庫)

グミ・チョコレート・パイン グミ編 (角川文庫)

グミ・チョコレート・パイン グミ編 (角川文庫)


追記

男性の気持ちはやはり男性にしか分からないのかと思ったのだが、「夜は短し歩けよ乙女」によく似た設定の藤谷治「恋するたなだ君」について、現代女流作家の代表であるよしもとばななが「この小説を嫌いな人と、私はきっと気が合わないと思う」と絶賛しているのは意外だった。「N・P」や「ムーンライト・シャドウ」「白河夜船」あたりを読み直したくなった。

恋するたなだ君

恋するたなだ君

ムーンライト・シャドウ

ムーンライト・シャドウ

吉本ばなな自選選集〈2〉Loveラブ

吉本ばなな自選選集〈2〉Loveラブ

*1: 「冷血」は新訳がスゴい - わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいるの記事が素晴らしい

*2:小田和正がミュージシャンになろうと思ったきっかけは、オードリー・ヘップバーンが窓辺に座り「ムーンリバー」をギターで弾き語りしている姿を見たことだと言う話を思い出した