読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ことの終わり

romance

「最大のライバルは、いつもきみの隣で眠るのが
 習慣になってる、この子だよ」
 
「なにばかなこと言ってるのよ。
 違うんだってば。ペットじゃ結局埋められないの。
 やっぱり、そういうのは人とは違うものなの」
 
その意味も分かる。
それはきっとそうなんだろうけれど。
でも、思うに積み重ねてきた年月の重みは強いはず。

たとえば。
ときに他人には見せなかった涙があっただろう。
ときに激しく怒り、あるときは、泣きじゃくることも。
愚痴に次ぐ愚痴を黙って受け止めてくれたのは、
いつだって、その愛猫だったんだよね?
 
あらためて思う。それには、敵わないよ。
 
しかも。
いつまでも、子供のようにちっちゃいのに、
昔と違って、目やにが増えて、
しょっちゅう吐いて、身軽さがなくなり、
急速に老いていくその姿に、
ぼくは想像せずにはいられない。
ペットロスになって、毎日毎日塞ぎ込む日々のきみを。
 
それともうひとつ。
 
埋められないものを満たしたいと言いながらも、
一方では、そんな繋がりを否定し続け、
相変わらず心の片隅で、どうしても他人を信じ切れず、
心を完全には誰にも預けられない、きみの心の聖域。

 
「ほらね。やっぱりそう。でも、覚悟はもうできてた。
 いつかはそうなると思っていたから」
 
完全に信頼して、裏切られたとき。
そのときには、耐えられないほどの
心の闇をきみは抱えていることを
知りながら、僕は・・・。
いや、そこに気付いたからこそ、なのだけれど。
 
嗚呼。だから、そんな強がりを言わせるまねは
決してしたくはなかった。
それは、本当なんだ。

それでも、そうしてしまったのは。
ただ、ぼくが負けたからなんだ。
 
絶対的にきみを必要とし、決して裏切らない存在である、
気まぐれで、わがままで、ときおりひどく甘えん坊になる、
あの子の揺らがない縄張り意識の強さに。
 
これからも忘れない。あの強い口調を。
 
「わたしは、可愛がるためにこの子を飼ってるの」