あの時、勇気があれば
あの日、共通の友人の結婚披露宴で偶然、同席だったね。
久しぶりに見たあなたは、とてもきれいに着飾って、昔と同じで、瞳をきらきらさせながら、僕を見つめた。
何年、時が経っても、僕はあなたの存在が特別なんだって、あの時気付いていたはずだった。
あの日は、お互い、隣に別の人がいて、既に別々の人生を歩んでいた。
そんなことになるくらいなら、あの日、勇気をもって「元気そうだね。逢えて光栄です」とだけでも伝えたらよかった。
あなたは待っていたんだね。僕のひとことを。
僕はあなたの心にも、自分のドキドキにも、気付かないように、思いを全て押し殺していたんだね。
寂しいのは、結果ではない。今の状況ではない。あの輝く日に、想い出を残せなかったことだよ。
たいせつな思いは、容易く言葉にできないもの。
今夜は冷えるけど、その分、星もよく見えるんだよ。
もしも僕の目が見えなくなる代わりにこの輝きをあなたの元に届けると悪魔に囁かれたら、迷わず取引に応じ、喜んで捧げるのにな。
※2007/10/03 04:31初出