2008-12-01から1ヶ月間の記事一覧

恋愛詩の金字塔 黒田三郎「ひとりの女に」

昭和29年に発表され、H氏賞受賞をした詩集「ひとりの女に」。 この一冊を超える恋愛詩集は国内では未だ出ていない。 終戦後の極貧の時代に書かれたものとは思えない、瑞々しさと喜びを湛えている。 この戦後詩だけでなく恋愛詩を代表する詩集のオリジナル版…

自分自身を愛せるようになったのは

1990年に「ニキータ」で名声を得たリュック・ベッソンは、1994年に初めてアメリカで映画製作をするにあたり、その舞台にニューヨークを選んだ。理由は様々浮かぶが、そのひとつが作品の中に見出せる。完成した作品とは、ベッソンの人気を決定づけた「レオン…

奇妙な必然

10/20。初出勤日。新天地の通勤電車で読みはじめた「人形愛」という小説。この本を本棚から選び取ったのはただなんとなくに過ぎなかった。 しかし、書き出しの5行程を読み、これは偶然ではないと確信した。 私は玉男を待っていた。玉男は十八歳である。この…

浪漫と郷愁の街、函館を往く

10月12日。あの日の函館の上空は厚い雨雲に覆われ、時折、小糠雨が降っていた。 元町隅と湾岸風景。 霧の中の洋館、夕暮れの家並み、雪の街路、物語を秘めた港の情影。 一瞬の光と影の中に昔日の面影が重なる。 不可思議な郷愁を誘う港町、函館。 1859年、横…