短編小説・掌編名作、傑作選367

短夜(みじかよ)に密やかに楽しみたい、掌(たなごころ)の小説傑作選。
ブログを書いていて楽しいことのひとつは、アンソロジストになれること。DJのようなコンポジット感覚への愉悦。これほど楽しい作業はない。そして一度書き上げたリストは時と共に移り行く。だから、この記事を誰も見なくなったずっと後であっても、時折、この不揃いなパッチワークの修正をし続けていくであろう。誰のためでもなく、自分の愉悦のために。(現在は絶版となったものもリストに挙げたが、未訳作品や、雑誌のみに邦訳され文庫本や単行本に収録されなかったものは、名作であっても除いた)


アメリカ文学


【イギリス文学】


フランス文学


【ドイツ文学】


【イタリア文学】

デンマーク文学】

  • アイザック・ディネーセン「猿」


ポーランド文学】


イスラエル文学】


ラテンアメリカ文学


ロシア文学


【インド文学】


【中国文学】

  • 莫言「秋の水」
  • 袁牧「子不語」

【日本文学】


kazuouさんの「私家版・世界幻想短編集十選」のようにジャンルを絞るか、またはidiotapeさんの「アメリカ短編小説二十選(私家版)」のように国別に絞ることも考えたが断念。

ミルハウザ『アウグスト・エッシェンブルク』を入れたかったが、中篇になってしまうのでNG
Aiasさんの「短編小説二十選」

安岡章太郎「海辺の光景」のように、短篇か中篇か区別がつきにくいものは除いた。
ryotoさんの「短篇小説二十選」

…では、今度は中篇でリストを作ってみよう。モーパッサン「脂肪の塊」を筆頭に。
最後に、短篇(掌篇)の素晴らしさを表現した名文を紹介する。

短篇であること。“one sitting”で一気に読み切ることができる長さの文章であることのなかには、特別の叡智が隠されている。論理の構造を積み重ねてゆく複雑な手続きを経ることなしに、直覚的なアイディアや表現によって全てを了解させてしまう言語の閃きの力。思考の緊張を繋ぎ止め、イマジネーションの素早い飛翔と着地とを実現する語りのスピード感。物語の冗長や弛緩を回避し、透明な簡潔性の充満する言語空間を提示するシンプリティの美学。この「短いこと」に由来する叡智が隠された文章には、常に特異な輝きが満ち溢れている。そしてこの緊張を孕んだ「瞬間の叡智」に感応する為には、読書の間に一生の全てを生き尽くす位の蕩尽が必要なのだ。掌篇達は、そうした瞬間的に閃く叡智を内部に抱き抱えていることによって、私達のたった一つの「生命」を何度も生き直させてくれる力を持っているのである。
今福龍太