やがて真理は

取り戻したい

猛烈な衝動が何かの節目であるかの
ように時折ぼくを襲う

身体でそれに抗うかのように
きまって僕は香水瓶を飾る棚に手を伸ばす

三桁はあるその中から
取り戻すべき時代に気に入った
香水をその入れ物の形と色で
瞬時に的確に探り当てる

蘇る気分の輪郭は
思いの外くっきりとしている
しかしエピソードに纏わる
言葉はきっと現在(いま)の自分に
ちょうどよく脚色されているように思える

感情は魔物だ
あのような悪魔の前では
正しさは寸分の価値も持たない

取り戻したい

前にしか進まない時間軸の中で
価値のバイアスは危険すぎる
背後にある執着のように見えるもの
エゴサに憑りつかれた瓦礫にも似た
醜悪さとだからこそ妖しい色香のある
唾棄すべき拘り

そこでは音楽は色を失い
偽物のカラーフィルターが
シークエンスを体裁よく収めようとしている

その歪みを修正させてくれるはずの
瓶に閉じ込められた液体さえも
そのパンドラの箱を開けるたび
揮発で濃度が高まってしまう

取り戻したい

実現性が低い場合であればあるほど
ぼくは嗅覚を刺激させ
夢想に陶然と酔いしれる

魔物が虜にさせる真相を
ブラックボックス化しても
敢えて究明はしないであろう

この先々生きていく中で
最も若く可能性を秘めているのは
常に現在であるという圧倒的な
真理がやがて突き付ける決断

未来を決め
過去を断ち
現在を活かす

取り戻したい

悲観的な衝動にも思える渇求は
存外荒地を拓く推力になりうるやもしれぬ



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