いまはただ
新しい世界を掴むために
からっぽにしないといけない、と聞いた
僅かでも毒の入ったグラスに水を注いでも、それは飲めない
一旦はからっぽにしてからでないと
器を綺麗にしてからでないと
哀しい記憶を無駄にしないために
手放さないといけないと聞いた
故郷を離れてみてはじめて故郷のよさが見えてくる
ずっと大切にしていたい想い出も
大好きよと告げてくれたあの照れた笑顔も
泣いた夜の数だけ強くなれるだとか
希望を捨てずに前に進めだとか
ありふれた励ましを信じられなくてもいい
明けぬ夜は無いだとか
止まない雨は無いだとか
そんな慰めを簡単に受け入れられなくてもいい
時が忘れてさせてくれるわけではない
娯楽が新たな夢を与えるわけではない
ただ、じっと耳をすましておこう
ただ、嗅ぎ分ける力は磨いておこう
ただ、読み取れる目を養っておこう
空の移り変わるさまを目に焼きつけ
時折溢れる感情を抑えずに委ねよう