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見えない力

romance

「始めなければ、終わることもない」
ずっと今のままでよかったはずなのに。
 
「会うのは最後にしよう。
 終わらないためにね」
「だめだよ・・・もう始まってるよ」
「えっ」 そうか、手遅れなのか・・・。
「始まっている?・・・うーん、そうだよ・・・ね」
「そうよ」
 
こうなったからには。
始めたことを「正解だった」と思わせたい。
「好きになってよかった」と思わせたい。
 
考えてばかりではなく、行動することに。
心に秘めているより、打ち明けることに。
知らないふりをしているより、手を差し伸べることに。
押すところは押し、引くところは引くことに。
 
人は恋をするほどに弱くなる。
さっきまで、あんなに話したのに、
また、すぐに声が聞きたくなる。
 
人は恋をするほどに強くもなる。
こんなにも、疲れているのに、
また、すぐに優しくなれる。
 
避け切れない、見えない力が、
繋ぎ、裂き、求めさせる。
 
いったい何ができようか。
いったい何をやめるべきか。
 
僕の中のパレットにはいつも、
無数の色が混ざり合い、
見る角度によって、
赤かったり、青かったりしている。
 
今怖いのは、僕の無造作に作られた色によって、
無色透明なものを汚してしまうことだ。
 
 
    
「純白なものに一雫のインキでも容赦なく振りかけるのは、
 私にとってたいへんな苦痛だったのだと解釈してください」
 
              夏目漱石こゝろ